北斗の拳の単行本のプレゼントをもらった話
子どもの頃の記憶って、断片的なのに妙にくっきりしている場面がありますよね。私にとってそれが、父が買ってきてくれた北斗の拳の単行本なんです。
たしか20巻あたりで、羅将ハンが出てくるところでした。
当時は正直、内容を全部理解していたわけじゃなかったんですけど、それでもページをめくる手が止まらなくて。なんというか、「怖いのに読みたい」みたいな、ある意味子供らしいちょっと矛盾した感覚がありました。
父は多分、そこまで深く考えずに買ってきたんだと思います。「これ有名だから」くらいの感じで。でも、あのときの私にはちょっと刺激が強かったみたいで、夜に思い出してしまって、布団の中で目を閉じながら「さっきのシーン、見なきゃよかったかも」とか考えていたのを覚えています。
それでも次の日になると、また続きを読んでしまうんですよね。あれ、不思議ですよね。
一度、あまりにも怖くて途中で本を閉じたことがあったんです。でも気になりすぎて、数分後にまた開いてしまって。その自分の行動に「いや、さっき怖いって思ったのに」とツッコミたくなって、ちょっとウケちゃいました。
今振り返ると、あのとき読んでいたのが羅将ハンのあたりだった、というのもなんとなく納得がいくんです。あの独特の存在感というか、ただ強いだけじゃない圧みたいなものが、子どもなりに伝わってきていたのかもしれません。
あと、細かいことなんですけど、本の紙の匂いとか、ページをめくるときの少し乾いた音とか、そういう感覚まで一緒に思い出すんです。リビングのテーブルで読んでいて、テレビの音が遠くで流れている感じとか。たぶん、その場の空気ごと記憶に残っているんですよね。
それと大人になってから改めて読み返したことがあるんですが、そのときは全然違う印象でした。「あ、こういう意味だったんだ」とか、「この流れ、ちゃんと伏線になってたんだ」とか、当時は気づかなかった部分が見えてきて。
同じ作品なのに、受け取り方がこんなに変わるんだなと、少し驚きました。
それとあのとき父が何気なく買ってきてくれた一冊が、こんなふうに長く残るとは、きっと本人も思っていなかったでしょうね。